
仕事ができて誠実で、教養も社会的地位も(お金も…)あるのにどこか不器用、だけど溢れるほどの愛で包んでくれる男性。ドラマ「パリの恋人」で、理想の恋人を演じてメガトン級の人気を獲得したパク・シニャン。その後も、「銭の戦争」「風の絵師」と大ヒットドラマを飛ばし続けている彼の魅力を解剖します!

パク・シニャンが“理想の恋人”のイメージを築き上げた秘密は、俳優デビューの前後に隠されているのかもしれません。
東国大学で演劇映画を学び大学院へ進むほど(02年に結婚した当時も、奥様は東国大学大学院生でした!)、演技を徹底的に学ぶ学究タイプで、彼の座右の銘は「いつでも全力を尽くすこと」という真面目ぶり。
さらにロシアのシェーフキン演劇大学に留学します。留学中のある日、東国大学の同級生ヤン・ユノから便りが届きました。初の長編映画を撮るのでぜひ主演してくれとのこと。
親友の映画には出たいが、せっかくの留学を中断しなくてはならないと悩む彼をヤン・ユノは必死に説得し、ついに映画『ユリ』(96)が完成します。
僧ユリが極限状態で修行する姿を描いた映画で、心も身体もスクリーンに投げ出すような彼の強烈な演技はたちまち評判に。パク・シニャンはこのデビュー作で96年の青龍賞(※)新人男優賞を受賞しました。
※青龍映画賞…1963年に創設された韓国最高の映画の祭典。
新人賞を取った彼に、どんどん仕事が舞い込みます。ドラマ「林檎の花の香り」(96)、「私の心を奪ってみて」(98)で、優しく知的なイメージを発揮。その一方で映画『プワゾン』(97)や『モーテル・カクタス』(97)では、都会的で繊細なイメージを残します。テレビと映画で見せてくれる様々なイメージが魅力となって、知名度、人気ともにぐんぐん上昇していきました。
そんな中、彼を一挙にスターダムにのし上げたのが、生命が途切れても妻に永遠の愛を誓う『手紙』(97/青龍賞 主演男優賞受賞)と、女性医師に純な愛を捧げるヤクザを演じた『約束』(98/ドラマ『恋人』の原作ともなった作品)、ヤン・ユノ監督の『ホワイト・バレンタイン』(99)。この3作品で理想の夫、理想の恋人、理想の男性のイメージを揺るぎないものにします。“キング・オブ・メロ”の称号を、パク・シニャンは築き上げました。
そこで彼が選んだ、まったくタイプの違う3作品をご紹介します!
ヘシクは強引な捜査で知られる悪徳刑事。ヘチョルは悪名をとどろかせるヤクザ。2人は互いに憎み合い、全く違う生き方をする双子だ。ある日、ヘチョルがヘシクの目の前で自殺してしまう。ヘシクがヘチョルの遺骨を持って故郷に帰ると、そこではヤクザどうしの抗争が激化し、いつしかヘシクはヘチョルに成り変わっていた…。
韓国映画界きっての若手演技派! 公開当時とそう呼ばれていたパク・シニャンと、映画界の重鎮アン・ソンギの演技対決に注目です。本来なら互いに火花を散らすところですが、撮影が進むに連れだんだんと2人の意気が合ってきたそう。バイクに2人で乗って会話するシーンは、その結晶だと言われています(お楽しみに!)。
『8月のクリスマス』のシナリオを書いた、オ・スングの監督デビュー作ですが、新人監督の作品にこの大物俳優2人が出たのは韓国映画ならではの「肩書きやキャリアにかかわらず、いい作品には進んで参加する」精神のたまもの。凍てつくような寒さの中での撮影を厭わなかった俳優たちに、監督は何より感謝したそうです。
パク・シニャンは、ドラマや映画で築いてきたイメージをすばっと脱ぎ捨てて、ここで敢えて難しい役柄に挑戦します。顔は同じながら、生き方も性格も全く異なる人格の双子。つまり二役を演じました。正反対の双子の役は、その後も『ビッグ・スウィンドル』(04)でも演じることになり、彼の当たり役ともなっていきます。
裏社会の男の役は映画『約束』で経験していますが、今回は暴力の世界の、陰の部分を徹底的に強調。つねに緊張感が走っている姿は、パク・シニャンが自分自身との真剣勝負をしているようにも見えます。不安定な精神、心の奥深くへと入っていく演技は、デビュー作の『ユリ』や『4人の食卓』(03)にも、通じるものがありそうです。
夫を殺害した容疑で死刑を宣告された女性シニョンは弁護も裁判も拒否し、すでに生きることを諦めているかのようだ。そんなシニョンの弁護を引き受けたソ・ジュナは海外研修もとりやめて、彼女のために調査に明け暮れる。ジュナの努力にシニョンは少しづつ心を開くようになり、2人はようやく向き合うようになる。
イ・ミヨンとの共演は、『モーテル・カクタス』(97)以来の2度め。しかし前回は大学の同級生という何気ない設定だったのに対し、今回は弁護士と被告という究極の関係。そこに死刑宣告という、重たい壁が立ち塞がります。しかしそうした厳しい条件の中だからこそ育まれる愛、許されない愛はより情熱的になるもの。初めは弁護士として見ていた人が、愛しい存在になっていきます。しだいに心の中が変化していく様子は、パク・シニャンがイ・ミヨンを見つめる目がすべて語ってくれます。
冷たい拘置所から開放され、初めて男と女として愛を確かめ合う海辺のシーンは、崇高なほどにロマンチック。このまま時が止まれば良いと願わずにいられません。
知的で繊細なエリートながら、どんな悪にも堂々と立ち向かっていく熱血弁護士。弱い立場の女性を救いだそうと、何もかも犠牲にして全力で闘ってくれる…。女性たちが最もパク・シニャンに期待するイメージを、実現してくれたとも言える作品です。映画『手紙』『約束』に続く、理想の男性像がここでまた誕生したといえるでしょう。相手への愛を自分に課された仕事を貫くことで伝えるところは、『パリの恋人』の不器用で真摯なギジュのキャラクターにも共通しているのではないでしょうか。
『手紙』のチェ・ジンシル、『約束』のチョン・ドヨン、そしてここでのイ・ミヨン。パク・シニャンは相手の女優を「最高に美しく輝かせる達人」でもあります。
対立する暴力団の奇襲に遭ったジェギュ一家は、満身創痍で山奥の寺に逃げ込んだ。その日から、僧侶たちの静かな生活は破壊されてしまう。平和を取り戻すために僧侶たちは立ち上がるが、あえなく失敗。居座り続けるジェギュらと彼らを追い出したい僧侶の対立はますます深まるが、さらにそこに別の暴力団がやってくる。
パク・シニャンにとって、これがコメディ初体験! しかし「いつでも最善を尽くす」がポリシーの彼は、全力でヤクザのジェギュになり切っています。また共演者の顔ぶれが豪華なこと。ジェギュの子分に「星を射る」のパク・サンミョン、『シルミド』のカン・ソンジン、「新貴公子」のホン・ギョンイン。僧侶には「いいかげんな興信所」のリュ・スンス、『フライ・ダディ』のイ・ムンシクら。僧侶たちのまとめ役でジェギュと正面対決するのは『王の男』のチョン・ジニョン。これだけ芸達者な顔ぶれが集うのも珍しいこと。僧侶たちは大ブレイクし、続編の『達磨よ、ソウルに行こう!』(04)も誕生しました。パク・シニャンは同作にカメオ出演しています。
最も「知性的で繊細」のパク・シニャンのイメージを覆す作品と言えるでしょう。ジェギュは乱暴な性格で、考え方はいたってシンプル。寺の静寂さと秩序を破壊しまくり、例えゲームであっても勝てば子供のように大はしゃぎ。しかし僧侶に友情を感じ始めるあたりから、コメディの枠を超えて、感動さえ感じさせてくれます。
彼は作品に取り組む前に、納得のいくまで人物分析することで有名で、監督や共演者が驚くほど、歩き方やクセまでリアルに役作りをしてくるそう。『ビッグ・スウィンドル』ではソウル中の本屋の主人を研究したように、今回もヤクザのボスをじっくり観察(どんな方法をとったのか不明!)し、キャラクターを作り上げています。
パク・シニャンはこの作品がソウルで公開される時、ある人を試写に招待しました。その人は、昔、お世話になった山寺のお坊さん。韓国では大きな試験を受ける前に、一切の雑念を払うため山寺に籠もって勉強する学生が多くいますが、パク・シニャンも大学院受験前にその山寺で3ヶ月を過ごしました。映画の後、パク・シニャンがお坊さんに「あり得ない設定でしょ」と言ったところ、「お前もそうだったじゃないか」と返されたそう。当時のシニャン青年は寺でいたずらしたり、若い僧侶とケンカしたりと、ジェギュ顔負けのワルだったようです。