朝鮮時代、警備を担当する官吏を「巡検(スンゴム)」と言いました。その中で制服を着用せずに秘密捜査に携わる人々を「別巡検」と呼んでいました。一般的な捜査を担当する巡検に対して、彼らの主な任務は情報収集。現在の私服警官のようで、事件現場で犯人と直接、対峙することもありました。記録にも残されている実在した役職で、健康で品格のある20代前半の青年が、その任に就いていました。
スンジョの父は王の護衛将軍でした。彼は父を尊敬し、親友リュ・ヒスと科挙の武科試験を受けて一緒に合格。25歳でヒスのいる捕盗庁勤務を希望し仕事に打ち込みました。しかし甲申の変が起きて父は開化派に襲われて死に、ヒスは開化派の裏切りによって斬首されてしまいます。スンジョは2人の死に傷ついて官職を辞して全国を放浪。8、9年をかけて医学、天文学、科学などを修め、父の旧友の薦めで捕盗庁傘下の別巡検に入りました。
ヨジンのどこか品のある、高貴な雰囲気は、出生した時から備わっていました。実は生まれた家は先祖代々、宮廷に仕える両班の家系。しかしヨジンの子供の頃に、父が反逆罪に問われて一家が没落。父は遠隔地に追いやられ、彼女は母とともに官婢になりました。その後、甲午の改革によって身分が解放されて、スンジョの推薦で別巡検に加わることになります。子供の時に悲劇を経験したため、ヨジンは感情を表に出すことがなくなりました。
新世代捜査官ガンウがデータを分析して事件解決の糸口を見つけていくのに対し、ボックンの切り札は長年の経験に基づいたカンです。自分の経験を信じ、マイペースで豪快そうに見えますが、以前に捕縛した犯人に逆恨みされたことがありました。息子が誘拐された上に、殺害されてしまったのです。それ以来、妻との仲は冷え切り、子供を見るだけで切ない気分が続きました。今でも子供が絡んだ事件に敏感に反応し、死体を扱うのが苦痛です。
ヌングムはおしゃべり好きのオバさんのようでいて、実はかなりの学者肌。自分のアザを種類と色で分類し、周囲に気味悪がられることもあります。特に彼女が得意にしている分野は薬草。驚くほど知識がある反面、薬草を見ると無意識に口に入れてしまうのが短所。このクセのために、宮廷を追い出された嫌な思い出があります。医女試験の前日に見知らぬ薬草に遭遇、うかつに食べてダウンして試験が受けらず、医女にもなれずじまいでした。
別巡検は1894年以後に作られた、実在の組職。演出を担当したイ・スンヨンとキム・ビョンスは、その史実に基づきドラマの時代的背景を1890年頃に設定しました。事件背景をリアルに表現するため、彼らは1年間、あらゆる古書と歴史資料とにらめっこ状態でした。感電死や女学校など近代化を象徴する記述を見つけたり、酢で血痕を見つける、今でいう「ルミノール反応」が当時、すでに使われていたことを資料から突き止めたそうです。
ヨジン役を演じたパク・ヒョジュは、ドラマ『乾パン先生とこんぺいとう』や『エアシティ』に出演した、人気も認知度もある女優さん。しかしヨジン役を獲得するため、新人に混じってオーディションに挑みました。もともと彼女はデビュー作の映画『品行ゼロ』に出演するため1000倍の競争に勝ち抜いた経験があり、今回のオーディションも、「感情を表さず内面に苦悩を抱えるヨジン役は、私にぴったり!」と自信を持って臨んだそうです。
デビュー作『僕らのバレエ教室』や『ピーターパンの公式』で繊細な青年を演じてきたオン・ジュワンが、『別巡検』で180度イメージを転換しました。今度の役は、ストレートな性格で暴力も辞さない熱血漢。『僕らのバレエ教室』で共演したイ・ジュンギも、この後『一枝梅(イルジメ)』で時代劇に初挑戦しました。オン・ジュワンがどんな難事件も解決する特別捜査隊員である一方、イ・ジュンギは絶対に正体のばれない義賊。この勝負はいかに?!
別巡検隊長カン・スンジョを演じるリュ・スンリョンは、この『新・別巡検』がドラマデビュー作という、かなり遅咲きの俳優。実は彼は韓国ミュージカルを世界に知らしめた『ナンタ』の第一期メンバーで、5年間舞台に立っていました。その後、ソウル芸術大学の先輩チャン・ジン監督に呼ばれて舞台版『トンマッコルへようこそ』などに出演しました。ここのところは、映画『ファン・ジニ』や『風の絵師』、『別巡検』と時代劇出演が続いています。