完全攻略ガイドII〜「チャン・ヒビン」を彩る、華麗なる五本の絵巻
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母后のミョンソン王后、先々代の中宮チャンリョル王后がこの世を去り、インヒョン王后も肅宗から中宮の座を追われ、オクチョンの運命を阻む者は全ていなくなった。肅宗は初めての王子誕生に喜ぶ余り、臣下の猛反対にも関わらず、王子を王位継承者にオクチョンを中宮の座につける。兄のヒジェらは権力の甘い味に酔いしれる一方で、都にはインヒョン王后の復位を望む声が高まっていた。それはインヒョン王后とオクチョンの対立を皮肉った書物になり、その内容は子供たちが歌って国中に広まっていくばかり。その書物は宮中にも持ち込まれ、いつしか肅宗の心はオクチョンから離れ、別の女性へと向いていく。なんとその相手とは、下働きの宮女だった！
中宮となったオクチョンと兄ヒジェらの勢いは留まるところを知らない。栄華を極める彼らとは対照的に、廃妃となったインヒョンの実家は、両親さえ外出を制限され生活はみじめなものだった。そんな中、廃妃インヒョンを慕う宮女チェムスリが肅宗の前に現れる。金遣いが荒くワガママ放題のオクチョンに疲れてきた肅宗は、チェムスリに興味を抱いていった。中宮の座に着いたのに、肅宗の心が離れていくジレンマにオクチョンは焦る。
インヒョン王后とチャン・ヒビンの対立を皮肉った小説『謝氏南征記』は、瞬くに間に国中の評判となり、その内容をわらべ歌にしたものが子供たちによって拡大。宮中では肅宗に新しい側室を迎えてはという声も高まってきた。オクチョンとヒジェの怒りは沸点に達し、誰の陰謀かと必死で調べるが手がかりさえ掴むことができない。いら立つオクチョンはチェムスリに鞭を振り上げた。止めに入った肅宗は、その時、自分の本当の気持ちに気づく。
肅宗に愛されたチェムスリは側室となった。おもしろくないヒジェたちは、彼女の毒殺を企むが、未遂に終わる。肅宗はこれを機に議政府（内閣にあたる最高政治機関）から南人を一掃し、西人を権力の中心に据えた。が権力を回復した西人らは、早くも二派に分裂。インヒョンも中宮として宮に戻ってくる。オクチョンは元のヒビンに降格、ヒジェは流刑地に送られてしまう。窮地に追い込まれたオクチョンは、墓荒らし事件を自作自演する。
チェムスリが王子を生み、オクチョンは我が子の婚礼を急いだ。しかし嫁選びを巡り、またもインヒョン王后と意見が対立する。肅宗と王子の心が自分から離れてしまったと思い込んだオクチョンは、行き場のない思いを巫女に託した。最初に標的にしたのはチェムスリの王子。原因不明の高熱に襲われたのを見て、呪いの威力を信じたオクチョンは、インヒョン王后に狙いを定めた。オクチョンの恐ろしい野望は、もう誰にも止められない。
肅宗とオクチョンの愛はいくつもの難関を乗り越え初恋を実らせたケースだが、実は正妻インヒョン王后を退けての略奪愛。それでもインヒョン王后は何が起ころうと、夫を信じてじっと待ち続ける純愛の人だ。全編を通じ物語の中心となるのはこの三人の愛だが、オクチョンの母とチョ・サソクとの不倫、夫に愛されなかったチャンリョル王后の寂しさ、夫を愛人に取られたチャグンアギの密通の末の復讐など、登場人物の数だけ愛があり、また愛ゆえの憎しみ、苦しみが描かれる。また息子の回復を願うミョンソン王后の命がけの祈り、宮を追われたインヒョンを暖かく迎える両親、父と母に最後まで従う王子の姿など、切ないほどの親子愛も見逃せない。
オクチョンに宮女の心得を教えたスクチョンは元は官妓（キーセン）。官妓は王や大臣たちの祝宴や食事に侍って華やかさを添える一方、政治や権力の最も近くにあって機密情報を握る存在だった。映画『王の男』のヨンサン君は、この官妓の制度を整えたことでも知られる。肅宗の臣下たちは朱子学の解釈についてしばしば論争を起こすが、役人は皆、朱子学を必須の教養として学んでいた。この学問を専門に研究する者は儒生と呼ばれた。これに対し民間信仰も浸透していて、後宮にも影響を与えた。病になった肅宗のために母后は巫女の言葉を信じて冷水を浴び、巫女の呪詛の威力はオクチョンの権力欲により火をつける。こんな人々が宮中と密接に関わってくる。
過去に製作された「チャン・ヒビン」のドラマや映画、また他の時代劇に比べ、このドラマはより忠実に時代考証が行われた。中でも王家の婚礼は格式が複雑で厳格なため、韓国ドラマでは異例の長期の準備期間が設けられている。またカメラには映らない細かい点にこだわり、例えばオクチョンが建てた祭壇の奥には、絹で作った凶悪な形相の鬼の人形が座っている。また画面に華やかさを加えるために、時には現代的な色合いも加えられた。その美しさが最も映えるのは、やはり側室や王后たちのあでやかな衣装。素材は季節によって絹だけでなく化学素材も取り入れ、色あいは伝統色とパステルトーンを重ねたり、王の衣装には威厳を示す金箔が多く使われた。
男性の勇ましい戦いや権力争いを描く時代劇が多い中、「チャン・ヒビン」は自分の実力を総動員して、野望を実現する女性が主人公のドラマだ。同じくヒロインが夢を実現する「チャングムの誓い」のチャングムが正義感が強い優等生なのに対し、オクチョンは最初のうちこそ苦労するが、側室になると肅宗に甘え放題。相手を陥れるために何でもし、性格の悪さをむき出しにする。また宮中を舞台にした映画『王の男』は、王でさえ手に入れられない大切なものを教えてくれるが、オクチョンは地位と金のためにとことん王の愛を利用する。これほどして自分に正直な彼女に、韓国では放映中にサポーターがぐんぐん急増。彼女の生き方は現代の女性を魅了し、共感を誘った。
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